睡眠不足の解消が仕事のパフォーマンス向上につながる!
仕事中に眠くなる時はありますか?
ビジネスパーソンとしては「仕事中に眠くなることなんてない!」と言いたいところですが、正直、誰にだって仕事中に眠気を感じてしまった経験はありますよね。そんな時は眠気を覚ますために、カフェインを摂取したりツボを押したりと、試行錯誤しているかと思います。
しかし、そんな一時しのぎを繰り返しながら働いているのだとしたら、とてももったいないことです。なぜなら、睡眠不足の状態は、体や脳のパフォーマンスが低下しているので、仕事のクオリティーや効率の低下が懸念されるからです。
最高のパフォーマンスを発揮して働けるように、睡眠を根本から見直してみませんか?
あの一流アスリートや実業家も睡眠にこだわっている!
実は、誰もが知っている一流の実業家やアスリートにも、睡眠にこだわっている人は数多くいます。
例えば、Amazonの創設者である『ジェフ・べゾス』氏は、早寝早起き・8時間睡眠を大切にしています。かつて、インタビューの中で「睡眠不足による疲労やストレスのせいで、判断の質が下がってしまう可能性があるのなら、睡眠時間を削ることはそれだけの価値があるのか?」と言っているほど、睡眠を大切に考えています。また、夜に近づくにつれて仕事が非効率化されるため、頭を使う事柄は午前に処理をしてしまうそうです。
マイクロソフトの創業者『ビル・ゲイツ』氏によると、クリエイティブな力を発揮するには、7時間以上の睡眠が大切とのことです。
世界最高峰のサッカー選手の1人である『クリスティアーノ・ロナウド』選手は、睡眠の専門家の指導を受けており、常に早寝早起きを心がけ、1日に5回睡眠を取っています。
野球界のスーパースター『イチロー』氏も、書籍「夢をつかむ イチロー262のメッセージ」の中で、「もっとも気をつけていることは寝ること」と言っているくらい睡眠を大切に考えており、睡眠時間を徹底して8時間確保しているそうです。
他にも、数多くの一流の実業家やアスリートが睡眠にこだわっています。私たちも、睡眠にこだわって一流の社会人…は言いすぎですが、自分の持つ力を最大限に引き出して仕事に臨みましょう。
睡眠不足ってどんな状態?
一般的に、睡眠不足とは、日中などの起きていなければならない時に、眠気で困るような状態を指します。
睡眠不足の状態は、認知機能や覚醒度の低下などが生じます。認知機能とは、記憶・思考・理解・計算・学習・言語・判断などの知的な能力です。覚醒度とは、脳の目覚めの度合いのことで、これが低下してしまうと、ぼんやりしてしまったり、危険や緊急事態にとっさに対応ができなくなったりします。どちらも、仕事をするうえで欠かせません。
他にも、「6時間以下の睡眠を2週間続けると、2日徹夜した時と同等まで認知機能が低下する」、「起床後17時間経つと、飲酒運転と同等のレベルまで脳や体のパフォーマンスが低下する」ことが研究によって判明しています。
また、睡眠不足は健康面にも影響をおよぼします。血圧の上昇や耐糖能(血糖値を正常に保つための能力)の劣化、免疫機能や身体機能への悪影響が確実視されています。研究によると、5時間未満の睡眠の場合は、7~8時間の睡眠に比べて、耐糖能異常のリスクが約1.3倍、糖尿病のリスクが約2.5倍になる結果が出ています。
さらに、慢性的な睡眠不足は、脳神経をつなぐ情報伝達の役割を持つ接触構造、『シナプス』の破壊を招きます。睡眠が不足するにつれて食作用を持つ細胞、「アストロサイト」と「ミクログリア」が活性化し、必要以上に脳の神経細胞を破壊してしまうのです。そして、過度のミクログリアの活性は、アルツハイマー病などの脳神経障害との関連が明らかになっています。
このように、睡眠不足の状態は、脳や体の能力低下を招きます。こんな状態で仕事にあたってしまっては、全力を尽くせず悔いの残ってしまう結果につながりかねません。
また、睡眠不足は、仕事に対してだけでなく、健康においてもデメリットです。なので、睡眠にこだわることは、仕事面・健康面においても有益に働き、人生を豊かにすることとも言えるでしょう。
最適な睡眠時間は人それぞれ!
ここまで読んだあなたは、睡眠不足を避けるためにしっかりと睡眠を取りたいと奮い立っていることと思います。では、いったい何時間の睡眠を取ればよいのでしょうか。
よく、「毎日〇時間以上の睡眠を取った方が良いよ!」と言っているのを耳にします。しかし、最適な睡眠時間は人それぞれです。季節や年齢の影響を受けたり、短い睡眠時間でも健康を保てる「ショートスリーパー」のような体質などの個人差もあったりするので、一概には言い切れません。
「まぁとにかく睡眠時間は長く取ればOKでしょ!」と思ったあなた。私も同じくそう思いました。でも、睡眠時間が長すぎると、心臓発作や心血管疾患のリスクが増大する研究結果もあり、長ければ良いとも言えないのです。
体内時計を整えよう!
最適な睡眠時間の指標となるのが「体内時計」です。
体内時計とは、24時間周期のリズム信号を発振する機構で、簡単に言うと、朝に目が覚め、夜に眠くなる仕組みです。これは、体内時計に応じて、睡眠ホルモンの一種である「メラトニン」が分泌されることで、脈拍・体温・血圧などを低下させ、睡眠を促進する作用が働くというメカニズムになっています。
睡眠不足は、この体内時計と生活リズムとのズレから生じます。この2つがズレてしまうと、日中などの起きていなければならない時にメラトニンが分泌され眠くなったり、夜寝なければならない時にメラトニンが分泌されず寝付けないことで、睡眠時間が少なくなってしまったりするのです。
なので、体内時計通りに眠気を感じたタイミングで睡眠を取ることができれば、睡眠不足にはならないのです。そのためには、体内時計をコントロールし、生活リズムに合わせて整えることが必要です。
ではどのようにして、体内時計をコントロールしたらよいのでしょうか。
大切なのは、朝の光を浴びることです。人間は、網膜から体内時計への直接の神経があるため、朝の光が目に入ることで体内時計に朝であることが伝達します。そして、毎日決まった生活リズムを心がけ、毎朝同じ時間で朝の光を浴びて体内時計を調整すれば、規則正しいリズムで睡眠が取れます。
よく、睡眠の「質」を上げるための方法として、寝る前に携帯をいじらないとか、自分に合った寝具選びとか、最適な室温とか、温かい飲み物で眠気を促すとか、さまざまな方法が言われています。そのどれもが、目的は「体内時計通りに寝るための方法」です。それらも間違いではありませんが、一番大切なのは「自分の生活リズムに合わせて体内時計を調整する」ことです。
まとめ
いかがでしたか。睡眠不足は、体や脳のパフォーマンスを低下させ、病気を引き起こす可能性も孕んだ恐ろしい状態だと分かったと思います。仕事の「質」を上げるために、そして健康を維持するためにも、人生の約3分の1を占める「睡眠」と本気で向き合ってみてはいかがですか。その努力があなたの人生を豊かにしてくれるかもしれません。
<参考文献>
駒田陽子,井上雄一(2006)「睡眠障害の社会生活に及ぼす影響」,『心身医学』47巻9号,P.785-791,一般社団法人 日本心身医学会
https://ci.nii.ac.jp/naid/110006381870
Hans P.A. Van Dongen, Greg Maislin, MS, MA, Janet M. Mullington, David F. Dinges(2003)「The Cumulative Cost of Additional Wakefulness: Dose-Response Effects on Neurobehavioral Functions and Sleep Physiology From Chronic Sleep Restriction and Total Sleep Deprivation」『SLEEP』26巻, 第2号, 2003年3月, P117–126, Oxford University Press
https://academic.oup.com/sleep/article/26/2/117/2709164
Michele Bellesi,Luisa de Vivo,Mattia Chini,Francesca Gilli,Giulio Tononi,Chiara Cirelli「Sleep Loss Promotes Astrocytic Phagocytosis and Microglial Activation in Mouse Cerebral Cortex」『Journal of Neuroscience』37(21)巻, 2017年5月24日,P 5263-5273, Society for Neuroscience
https://www.jneurosci.org/content/37/21/5263